「薪を焚く」
ラーシュ・ミッティング 著 朝田千恵 訳 晶文社
ノルウェーの作家によるただの実用書にとどまらず、
もはや美術書といえるお気に入りの本。
薪を焚く工程についてひたすら詳述したものであり、
それは日常的なテーマと思われる。
過酷な北欧の冬を生き抜く人々の自然と対話をして、
自然を尊う営みがとにかく胸に響く。
決して古い歴史書ではない。ノルウェー本国では2011年刊行以来、
16万部のベストセラーとなり、そして世界15か国で翻訳され
50万部のベストセラー。英国The Bookseller誌で2016年最優秀
ノンフィクション大賞受賞。
日本では昨年11月に刊行された。
木を伐って、割って、積んで、乾かし、燃やす。
現在も北欧人にとって薪を焚く行為は人生そのもの。
薪を焚く事への特別な思いがあり、この本が生まれたと思う。
スローライフのすすめではなく、木と薪と人間の深い物語である。
興味深い話は沢山あるが、良い薪を作る事は人間の資質まで、
問うてくる。薪の積み方で人間の将来性を測る言い伝えがあり、
「家にしっかりとした薪棚がない場合は、夫になる資格がない。」
・・・まったくその通りだ。
もう数回読み込んだ。
なぜか、読み終わると所有している斧の手入れをしたくなるし、
薪小屋の薪が美しく見える様に少し積み直す。
雨降りに この時期想い 冬想う。 房主